Bear with me. 「私を連れた熊」じゃないよ。それだとちょっとコワいです。実は、これで「ちょっと待ってね」という意味になります。ややかしこまった言い回しなので、正しくは「少々お待ちください」ですかね。
日米の技術者によるシステムレビューに通訳として同席したときのこと。
こういう会合ではとにかく膨大な量の資料に目を通します。要件定義とか設計書とか。ソースコード、テスト計画、運用手順書とか。しかも全部、日英セットです。
でも!紙の資料は一枚もありません。ワード、エクセル、パワーポイントなど、ファイル形式はさまざまですが、いずれもデジタルです。出席者の皆さんはそれぞれラップトップ持参で入室します。紙とボールペンを使っているのは私だけ。通訳というのはつくづくアナログな商売です。
さて。この会合で何度も繰り返し使われた英語のフレーズがありました。
これです。
Bear with me.
このイディオム、ご存知ですか? どのような場面で使うのでしょう。
たとえば、このシステムレビューのような会合で。
膨大な資料の山からめざすファイルを探すとき、あるいは何百行ものコードから目的の文字列を探すとき、画面を見つめながらものすごいスピードでキーボードをたたきます。でも見つからない。なかなか見つからない。
こういうとき、周りの人を放置したまま、黙々とキーをたたきますか? 多分それはない。日本でもアメリカでも同じです。こちらのフォルダを開き、あちらのスクリーンをスクロールしながら、「ちょっと待ってくださいね」とか「お待たせしてすみませんね」とか言うでしょう?
これを英語で言うと、
Bear with me.
なのです。
実際、先の会合でもあちらのエンジニアがもはや独り言のように Bear with me, bear with me, bear with me といいながらキーボードをたたいていました。
動詞 bear の基本的な意味は「辛抱する、我慢する、耐える」です。たとえば。
I can’t bear it when people turn up late.
「遅刻するヤツには我慢がならない」
で、bear with me/us は相手に辛抱や我慢をお願いする表現になるのですが、これが使われる文脈は上に述べた通り、非常に限定的です。Cambridge Dictionary では「自分が何か作業をしている間、相手を待たせるときに使う表現」と説明しています。また、Macmillanには「丁寧な言い回し」という但し書きがあります。実際、ビジネスシーンで非常によく使われます。
ひとつだけ注意!
bear のスペリングに要注意です。BEAR です。BARE ではありません。発音はまったく同じ(/beər/ または /ber/)なのですが、bare は「身体が衣服で覆われていないこと」つまり「裸であること」を表す形容詞です。bare with me にすると、たいへん恥ずかしい思いをすることになるかもしれません。取り違え厳禁です。
最後にもう一度おさらい!
Bear with me は「ちょっと待ってね」ですよ!
最後まで読んでくれてありがとう!またね。
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