so-called two republics:いわゆるふたつの共和国

「いわゆる」を漢字で書けますか?「所謂」です。「世に言うところの」とか「俗に言う」という意味ですね。英語では so-called です。わりと知名度の高いフレーズだと思います。でも、このフレーズは「俗に言う」以上の意味で使われることがあるのですよ。どんな意味?

ここ数日、ニュースで「いわゆるふたつの共和国」というフレーズをよく見かけます。ご承知の通り、良いニュースではありません。そしてこのケースの「いわゆる」には、単なる「世に言うところの」という意味にとどまらず、非難や不同意といった含意が感じられます。

実際、英語の so-called を英英辞書で引くと、commonly named(一般に称される)のほかに、もうひとつの意味が見つかります。たとえば。

used to show that you think a word that is used to describe someone or something is not suitable or not correct (Cambridge)

誰かまたは何かを表現するのに使われた言葉が、それを表すのに「ふさわしくない」とか「正しくない」と思ったときに、その気持ちを示すのに使う、ということです。

たとえば、今回、ロシアはドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立を承認すると表明しましたが、米国や英国やフランスやドイツや日本は「そんなことは認められない」と反論しています。これらの国々にとって「ドネツク人民共和国」あるいは「ルガンスク共和国」をそのまま使えば、あたかもそういう国があるようにとられてしまう。「それは認めませんよ」という意味を込めて、so-called Donetsk People’s Republic とか so-called Luhansk People’s Republic と表現しているわけです。

日本語の「いわゆる」には非難めいた含意はないように思います。どちらかと言うと「自称ドネツク共和国」とか「彼ら言うところのルガンスク共和国」のほうが、この場合の so-called に近いかもしれませんね。

ちょっと Cambridge Dictionary の例文を見てみましょうか。

It was one of his so-called friends who supplied him with the drugs that killed him.
「彼に麻薬を売ったのはいわゆる友人のひとりだった。その麻薬のおかげで、彼は命を落とした」

やっぱり訳文の「いわゆる」には違和感があります。「自称」としたほうがしっくりくるように思います。

英語の記事のなかには、so-called の代わりに self-proclaimed を使っている記事も散見されます。これはまさしく「自称・自ら主張した」という意味です。

ちなみに、わたしイチオシの Vocabulary.com では、非難・不同意の so-called しか出てきません。かなーり辛辣です。どちらかと言えば茶目っ気のある辞書なのですが、ここではキャラ変わってますね。

少し長くなりました。最後まで読んでくれてありがとう。おつかれさまでした。

参考文献:

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