アメリカ人のお家で暮らしているとき、使われている単語もセンテンス自体も簡単なのに、どういう意味だかすぐには分からないことがけっこうありました。そのひとつが want to (do) です。
例えば夕ご飯のとき、お母さんが “You want to eat more.” と言って、私の皿にイモだのマメだのたっぷりとお代わりを寄越すんです。最初は、いやもうお腹いっぱいです、食べたくありません、何で勝手に決めるかな、とか困惑したものですが、これは一種の命令文なのですね。要するに「もっと食べろ」と言ってるわけです。
否定文も同じです。雨に濡れた傘を風呂場で開いて乾かそうとしたときのこと。妹のシャーリーが飛んできて、”Junko, you don’t want to do that!” 直訳すれば「あなたはそんなことしたくない」。言われたこっちは「いや、私は傘を乾かしたいんですけど…」と思うわけですが、この場合、私の願望なんか実はどうでもいい。本当のところは「傘を開いて欲しくない!」という意思表示なのです。「傘を開くな」と命令しているも同然。オイタをしている子どもなどにもよく使われる表現です。
あ、ちなみに家の中で傘を開くのは縁起が悪いのだそうです。
さて、この You want to (do) に丁寧表現の助動詞 may を付けると「~なさったほうがよろしいのでは?」「~なさったらいかがでしょう」といった提案、助言の表現になります。目上の人やお客様など、丁寧な言葉で接するべき人にも使えるので覚えておくと重宝します。
You may want to save this document for future use.
後日必要になるかもしれませんから、この文書を保存しておいたほうが良いかと思います。
You may want to consider taking the train instead of the bus.
バスより電車のほうが良いかもしれません。
(バスではなく電車で行くことを検討されてはいかがでしょう。)
ところで、「~したほうがよい」というと、真っ先に had better (do) を思い浮かべる方も少なくないでしょう。でもこの表現は要注意です。これは「~しないとヤバイ」という意味なんですよ。「~するのが身のためだ」とか「~しないと困ったことになる」とか、警告のニュアンスを含んでいて、なにがしかの緊急性を伴う状況で使われる表現なのです。私は主語が I とか we とか、自分を含んでいる時以外、使わないようにしています。
I’d better go right now.
もう行かないとまずい。
We’d better think it out again.
それについてはもう一度よく考えてみないといけない。
注意が必要とはいえ、よく使われる表現であることは間違いありません。でも、今すぐ出発しないと飛行機に乗り遅れる、のような緊急事態は別として、上司や先生、取引先の人などには使わないのが無難です。
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