fish and chips:順番を入れ替えてはいけません

行ったり来たり。踏んだり蹴ったり。出たり入ったり。扉の開け閉め。電車の乗り降り。日本語の慣用表現です。来たり行ったりとは言わないし、扉の閉め開けとも言わない。実は、英語にも似たようなイディオムがあります。

翻訳中の原稿に、hard and fast というフレーズが出てきました。これは「堅くて速い」ではなく、「固定された、変更不能な」という意味のイディオムです。そして日本語の「行ったり来たり」と同じように、単語の順番は固定されており、入れ替えることはできません。fast and hard とは言わないのです。

英語にはこの形式のイディオムが無数にあります。文法的には、バイノミアルペア(binomial pairs / binomials)とかワードペア(word pairs)と呼ばれ、同義語や反対語、あるいは密接に関連するふたつの単語を接続詞や前置詞でつなぎます。

たとえば。

I don’t feel like cooking. Let’s go get some fish and chips.
「食事の支度をするのが億劫だ。フィッシュ・アンド・チップスでも食べに行こう」

fish and chips もバイノミアルペアです。chips and fish とオーダーしても、ちゃんとフライドフィッシュとフライドポテトが出てきます。でも、ネイティブは chips and fish とは言わない。必ず fish and chips です。

fish and chips にかける salt and vinegar(塩と酢)も同じです。

食べ物関係はけっこうありますね。food and drink, bread and butter, ham and eggs, gin and tonic などなど。

日常会話やビジネス英語で使うバイノミアルをいくつか挙げましょう。

I’m sick and tired of listening to your complaints.
「君の不平不満にはうんざりだ」

She’s going to find out sooner or later, so you might as well tell her now.
どうせバレるんだから、いま言っちゃったほうがいいんじゃないの?」

日本語でも「遅かれ早かれ」って言いますね。英語では逆。sooner が先行します。

I’m not at your beck and call!
「私があなたのいいなりだと思ったら大間違いよ!」

It’ll take me two weeks, give or take a few days.
「数日前後するとしても、だいたい2週間で用意できます」

Your decision can make or break this project.
「このプロジェクトの成否は君の決断にかかっているんだ」

Tim’s presentation was excellent – short and sweet, just how I like it.
「ティムのプレゼンは見事だね。簡潔で要領を得ている。実に好ましい」

例を挙げればきりがありません。ちょっと調べてみると、え、これもバイノミアルなの?っていう表現がごろごろ出てきます。 「アレもそうかな?」と思いついた人、調べてみてね。

おつかれさまでした。読んでくれてありがとう。単語は正しく並べようね。

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